Love Step
ほどなくして香澄が来た。



相談できるのは香澄ちゃんしかいないから食べながら言ってみた。



ゆきちゃんの事ではなく琴美さんの事。



「わたしは良い人だと思うんだけど……」



「スタッフともめるか~ そんな世界、あたしも知らないしな~ 年が近いからやりにくいのかもね」



「……うん」



頷きながらコーラのカップに手を伸ばす。



「じゃあさ!あたしがお客さんになってネイルしてもらうよ!ちょうど来週お姉ちゃんの結婚式があるから」



「お客さんに?」



「そうだよ あたしが琴美さんっていう人がどんな人だか見極めてきてあげる」



良い事を思いついたと両手をポンと打った。



「いいの?」



「結婚式があるからちょうど良いよ!予約を取って行けば良いんだね?」



「そうだけど……」



香澄ちゃんに迷惑かけてしまっているようで申し訳ない。



「いいからっ!あたしが感じたままを言うから」



早速予約を取り、明日香澄はネイルサロンに行く事になった。



香澄が帰った後、ソファーに座る杏梨は浮かない顔だった。



わたしは何がしたいんだろう……。


琴美さんの事を香澄ちゃんに見てもらっても何も変わらないのに……。


ゆきちゃんは琴美さんと会わない方が良いって言うんだから。


ゆきちゃん……。


そうだ、ゆきちゃんが何を悩んでいるかが問題だったよ。


彩さんの事?それとも……違う女(ひと)?



重いため息を吐いてテレビのリモコンに手を伸ばす。



見慣れた男女のアナウンサーが映る。



夕方のニュースの時間だ。



『それでは芸能ニュースです』



ぼんやり見ていた杏梨は耳を疑った。



「……彩さんが……引退……?」



彩が芸能活動を引退するニュースだった。



< 450 / 613 >

この作品をシェア

pagetop