Love Step
「彩さん・・・本当に引退しちゃうの……?」



『もう知っているのか?』



「うん、今ニュースで……」



『お前が気にする事はないんだからな?精神が不安定で、いや、たいした事はないんだけど、フランスで療養する事にしたんだ 長期休養はまだ姉貴みたいな立場じゃ戻った時仕事がないからな それならいっその事引退することになっただけだから』



これで伝わったかな?


俺が言いたいのは姉貴の事はほっとけってことなんだけど。



電話の向こうは無言だった。



『杏梨?』



「うっく……」



やべっ!泣いている?



『杏梨?泣いているのか?どうしたんだよ?』



「だ……だって……峻くんが……優しすぎるから……」



『優しすぎるって……そうじゃないよ いや……そうかも……だってさ、好きな女だったんだからな』



『いや、今のは軽く受け流しちゃって』



最後まで言ってしまってから峻は慌てた。



「……ありがとう」



峻くんを好きになっていればこんなことにならなかったのかな……。



『とにかく……もう気にするなよ じゃあ』



電話が切れた後、我慢していた涙がポロポロと頬を伝わった。



彩さんの事やゆきちゃんの悩み、琴美さん……何もかもがうまく行かなくて悲しい。



しばらくの間、泣いていた杏梨だった。



< 452 / 613 >

この作品をシェア

pagetop