Love Step
「ふ~ん、やれば?」



「あれ?前はホストだけはやらないでって言ってたじゃん」



帰国後、出会った時はあきらに夢中になった。



他の女とあきらが一緒にいると思うと嫉妬心が心を占めた。



だからホストだけはやらないでといつも言っていたのだ。



だが、最近はあきらがつまらない男に見えてきた。



別れたいとまで思っていた。



「どうでもいいわ あきらが真面目に働いてくれれば」



バッグをドレッサーの上に置くと部屋を出た。



「あ、おいっ」



あきらが呼び止めたが琴美は小さな洗面所へ行ってしまった。



手を洗い、ふと目の前の鏡を見るとあまりにも疲れた自分の顔に驚く。



ひどい顔……。


パリにいた頃はこんなんじゃなかったのに……。



顔を覆うように手を当てていると、後ろから両肩に腕が回り抱きしめられる。



「どうしたんだよ?疲れたのか?」


あきらが耳元で囁く。



「そうよ 疲れたの 少し放っておいて」



身体に回ったあきらの手を解くと琴美は寝室に行きベッドに横になる。



「疲れたんならマッサージしてやるよ 俺、得意だろう?」



付いて来たあきらは横になった琴美の上に覆いかぶさる。



「もうっ!本当に疲れたの 離れてよ!」



乱暴に身体を動かすとあきらが舌打ちをして退いた。



「わかったよ!1人で寝てろよ!俺は出かけてくる!やっぱ年には勝てないな!」



暴言を吐き捨ててドアを乱暴に閉め、あきらはいなくなった。



帰ってこなければいいのに……。



感情が今にも爆発しそうで自分が怖かった。



別れると言えば、あの男のことだから今までしてきた事をネタにゆすられるだろう。



今は何も考えたくない。



琴美は眠りに落ちた。



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