Love Step
「俺も幸せだよ」



「ゆきちゃん……」



サラサラした髪が潮風に揺れている。



整った顔でわたしをこれ以上無いくらいに優しく見つめてくれる。



あまりにも見つめ合いすぎて、注文を取りに来たウェイターの咳払いでここがどこなのか思い出す。



伊勢海老のコース料理と、雪哉はビール、杏梨はトロピカルフルーツのジュースを頼んだ。



「わたしここでずっと暮らせそう」



「まだ一日も経っていないのに?」



「うん こんなに綺麗な海の近くで過ごせたら良いなって」



「沖縄だけが綺麗な場所じゃないよ?ハワイやモルジブ、そうそうタヒチの海は最高に美しいらしいよ」



「タヒチ すごく南国って感じしかわからないけど、行ってみたいな」



綺麗な透明の海、美しい熱帯魚 ロマンチックな水上コテージ。



「新婚旅行はタヒチにしようか?」



「本当!?行きたいっ♪」



「じゃあ、高校卒業したら俺の奥さんになってくれるね?」



「っ……ゆ……きちゃん……」



ゆきちゃんの奥さん……。



婚約したけど、結婚はまだまだ先のことだと思っていた。



もちろん結婚する事に異存はない。



でも自分の年からすると早いような気がする。



「ゆきちゃん――」

「雪哉さんっ!?」



杏梨が口を開いた時、ハスキーな女性の声が聞こえた。



雪哉たちのテーブルに影を落としたのは青い海のようなサンドレスを着た20台後半の女性だった。



杏梨はその女性を見てポカンとした表情だったが、雪哉は無表情だった。




「まさか雪哉さんも沖縄に来ていたなんて 美咲が知ったら驚きますよ」



雪哉の表情には気づかず、わくわくしたような笑顔で女性は言う。




美咲さん……?



杏梨の記憶にある美咲とは女優の浅川 美咲しかない。



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