Love Step
* * * * * *



「文化祭には遼平さんを呼ぶんだ~」



香澄がボードにペンキをペタペタ塗りながら隣の杏梨に嬉しそうな笑みを向けた。



「杏梨は?あっ……雪哉さんを呼べるわけないか……」



手を止めて杏梨の顔を見る顔は申し訳なさそうだ。



「うん 仕方ないよ 来たら大騒ぎになっちゃう」



「文化祭は即終了だね 遼平さんもカリスマ美容師で有名になっちゃったらどうしよう あ~ それは嫌だよ嫌だ 会う時間も少なくなっちゃうし、彼がお客様に笑いかけるのも嫌っ!」



なんとも話が突拍子もない方向へ向かっていく。



「香澄ちゃん……」



自分にも経験がある。



雪哉がお客様に笑いかけたり、話をするとすごく嫌だった。



今も嫌だが仕事だから仕方ない……だから考えない事にしている。



家に帰ってくれば杏梨だけの雪哉だから。



付き合い始めたばかりの香澄には無理もないと思う。



「遼平さんなら大丈夫だよ」



根拠はないけれど香澄を励ましたかった杏梨だった。




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