Love Step
「そこまでにしておけよ 雪哉」



ショックと不安が大きく現れている瞳で立ちすくんでいる杏梨を志岐島は雪哉に見るように顎で示す。



まだ怒りのおさまらない雪哉だが、相手は気を失い殴っても痛みを感じないだろう。



志岐島は携帯電話をポケットから出して救急車を呼んだ。



苦々しげな表情の雪哉は杏梨に近づくと心配そうな顔に変わる。



視線が合うと杏梨は首を横にねじの巻かれた人形のように振った。



「な、何もされて……ないよ」



搾り出すようにやっと言う。



「杏梨……」



言葉が出なかった。



言葉によっては杏梨の心を傷つけトラウマが復活してしまうだろう。



「ゆきちゃん……ごめんなさい……」



「謝らなくていいんだ」



抱きしめたらどんな反応をするのだろうか?



雪哉は腕を伸ばせなかった。



その時、杏梨が雪哉の懐に入るように動いた。



杏梨の頭が雪哉の胸に付くとやっと腕を伸ばし抱きしめる事が出来た。



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