Love Step
「ゆきちゃん、どうして笑って見てるの?」


杏梨は食べる手を止めて雪哉を見た。


くりくりとした目で自分を見つめる杏梨を見てさらに笑顔になる。


「杏梨の食べっぷりが好きなんだ」


「どうせ大ぐらいですっ そんな事言っているとゆきちゃんのも食べちゃうからね?」


杏梨はプクッと頬を膨らませてからべーっと舌を出した。



「ご馳走様でしたっ!」


ぺろりとお弁当を平らげた杏梨は満足げに雪哉にお礼を言った。


「本当においしかったよ こんなお店知っていたんだね~」


見直したとばかりに頷く。


「もちろん 俺を誰だと思っているんだ?」


笑いながら言う雪哉は壁にかかっている時計に視線を移した。


「時間だ、行って来るよ」


「うん いってらっしゃい ゆきちゃん わざわざありがとう」


時間が空いたのなら自分のオフィスでゆっくりすることも出来るのにわざわざ来てくれて杏梨は嬉しかった。


「杏梨、本当にどこもなんともないかい?」


「もうっ ゆきちゃん しつこいよ 大丈夫だからっ」


過保護すぎる雪哉に呆れる。


「何かあったら貴美香さんや親父に大目玉だからね」


「ゆきちゃんは怒られないよ わたしが悪かったんだから」


杏梨が真剣な顔になって言うと雪哉の大きな手が杏梨の頭に置かれた。


そして柔らかい髪をくしゃっと弄る。


その途端、杏梨の心臓がトクンと音を立てた。


顔が赤くなりそうだった。


「俺が保護者なの」


髪を弄った指は杏梨の頬を突いて離れた。


「じゃあ、行って来るよ」


「い、いってらっしゃい」


雪哉が出て行ったドアを放心状態で見つめた杏梨だった。




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