Love Step
「どうした?」


酸素不足のように息を飲む杏梨。


「わたし……」


「大丈夫、君はとても可愛いよ その顔立ちは髪型で左右されるものではないから」


それって……髪型がどうであっても可愛いって事?


雪哉の言葉に安心感を得て杏梨は深く息を吸うと目を閉じた。


雪哉は鏡にかかる白い布を取った。



「目を開けて」


自信を持った声が聞こえてきて杏梨は目を恐る恐る開けた。


目を開けた瞬間、何度か瞬きをしてしまう。


それから首をかしげると鏡の中の女の子の髪がふわっと揺れた。


「ゆきちゃん……」


「可愛いだろう?」


どんな魔法をかけたの?

鏡の中のわたしはわたしの知っている女の子じゃない。

それに3年前の髪が長かった女の子とも違う。


「ゆきちゃん、本当に……わたし……?」


「もちろん 杏梨に決まっているだろう?」


鏡の中で笑いかけるゆきちゃんと目が合う。


雪哉は杏梨の髪に撫でるように触れる。


「さわってごらん?」


言われるままに髪に触れてみる。


「うわぁ……っ……」


ふわっとした感触に驚く。


「これが……わたしの髪……?」


「もちろん 杏梨の髪さ 下の方はエクステで長くしたけどね」


まだじっと鏡の中を見ている杏梨に雪哉は優しい眼差しを向けていた。


やっと杏梨は過去の呪縛から抜け出そうとしている。


そのきっかけはわからないが喜ばしい事と言えるだろう。


その時、杏梨が顔をしかめた。




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