Love Step
「赤くなっている」


右足の弁慶から足首までが赤らんでいる。


それを見た雪哉は顔をしかめた。


杏梨は赤らんでいる足を見ている雪哉から視線をそらした。



男の人が女性物の香水を漂わせているのは……。


杏梨は雪哉が女性と抱き合っている所を想像してしまいギュッと目を閉じた。



「杏梨?」


「も、もう大丈夫だから ありがと」


杏梨は立ち上がると床が濡れるのもかまわずに自分の部屋に逃げ込んだ。


部屋に入る前に杏梨を呼ぶ雪哉の声が聞こえた。



部屋に逃げるように行ってしまった杏梨を見て雪哉は眉を寄せた。


なぜこんな時間にホットミルクを飲もうとしていたんだ?


腕時計を見ると3時30分を回っていた。


部屋に入った杏梨は濡れたスウェットを脱ぎ、新しいパジャマ代わりのスウェットに着替えた。


ベッドに力なく横たわる。


ゆきちゃん……足より胸が痛い……よ……。



* * * * * *



けたたましい目覚まし時計の音でやっと杏梨は目を覚ました。


すごく眠くてこのままずっと寝ていたい。

……そうだ……今日からタクシーだっけ。




洗面所で顔を洗って鏡を見るとため息が漏れる。


可愛くなった髪型に男の子用のチェックのシャツにジーンズ。

なんか……似合わない……。

でも洋服を買えなかったのはわたしのせいだ。

自業自得ってやつ。


服が似合わなくてため息が出たけど、もっと他の理由がある。


杏梨は雪哉に彼女がいると思っているからだ。



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