Love Step

抑えきれない気持ち

放課後になると杏梨は憂鬱になった。


夜になればゆきちゃんが帰ってきて話し合おうって言うはず。

わたしが嫉妬しているって知ったら一緒に住めなくなる?

妹としてじゃなく見て欲しい。

途中で降りる香澄ちゃんと一緒に電車に乗った。


わたしの病気は良くなっていると思っていた……。

学生で混んでいる電車にすんなり乗ったけど……。


わたしの後ろに男性が立った途端、冷や汗が出て身体が震えてきた。



「杏梨、気分が悪くなったんだね?」


杏梨が急に黙り込んだのを見て香澄が言う。


「か、香澄ちゃん……」


その時、電車が止まった。


香澄は杏梨の手を引っ張ってホームに下りた。


貧血を起こしたように目の前が回って杏梨はその場にしゃがんだ。



「杏梨、あそこに座ろう」


杏梨をゆっくり起き上がらせるとホームに設置してあるベンチに座らせ、そしてすぐ隣の自動販売機で水を買って杏梨に飲ませた。



しだいに落ち着いてきた杏梨だったが電車に乗れたのは1時間以上も経ってからだった。


空いている車両を選んで慎重に乗る。


香澄はずっと杏梨の側を離れずに、マンションまで送って行った。


「ありがとう 香澄ちゃん 遠回りになっちゃったね……」


「いいんだよ すぐに落ち着いて良かったよ」


香澄は申し訳なさそうな顔をしている杏梨ににっこり笑うと駅に戻って行った。


* * * * * *


自分の部屋に入ると疲れを感じてベッドに横になった。


昨日の寝不足もたたっているのだろう。


頭を枕に付けるとすぐに眠りに落ちていった。



その頃、雪哉は仕事に集中する事が出来なかった。


今日は一日中、杏梨が気になって仕事が手につかなかった。


ったく、杏梨は突然何を言い出すんだ?

彼女と会うんなら分からないようにしてだと?

今、俺に彼女はいないだろ、

何を根拠に彼女がいると思っているのか……。



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