Love Step
「雪哉さん?雪哉さん?」


打ち合わせの最中に物思いにふけってしまった雪哉にめぐみが呼ぶ。


「雪哉さん?」


もう一度呼ぶと雪哉はハッと我に返りめぐみを見た。


「雪哉さん、どうかしたんですか?」


いつもと様子の違う雪哉にめぐみは小首を傾げる。


「あ?いや、すまない 続けて」


「あ、はい では続けます 売り上げですが……本店は伸びていますが、代官山店は下がり渋谷店は先月とほぼ同額です 代官山店の方は近くに新しい美容室がオープンした為にお客様を取られている状態です」


「ああ……あの店は施術料が安いから学生層にはいいかもしれない だが、それだけだ 技術はうちのスタッフの方が上だし、料金はあの店には及ばないが高くは設定していない。すぐに客は戻るだろう」


「そうですね 代官山店の店長もそう言ってました」


「めぐみが様子を見に行ってくれないか?必要とあらばスタッフの再教育も頼むよ」


雪哉は冷めてしまったコーヒーを飲み干すと、それでもまだ足りないと立ち上がりコーヒーを入れに行った。


「雪哉さん、最近忙しいからお疲れでは?」


「ん、そうだな 徹夜もだんだんきつくなってきたよ」


年かな~と秀麗な顔で笑う。


「年って、まだ20代じゃないですか、それを言ったら私も年って言う事で……とにかく、疲れた顔をしていると杏梨ちゃんが心配しますよ?」


杏梨の名前が出てきて雪哉の動きが止まる。


熱いコーヒーを飲んで仕事に没頭できるかと思いきや、杏梨を再び思い出し深いため息が出た。


「報告はこれで終わりです たまには早く帰ってあげたらいかがですか?雪哉さんの予約も入っていないし」


めぐみに退社を勧められて雪哉は甘える事にした。



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