Love Step
「だって、男の人は……好きの感情がなくても抱けるんでしょう?」


杏梨の身体がぶるぶると震えてきた。


「杏梨……」


「だからあの男はわたしをレイプしようとしたんでしょう?」


「お願い、ゆきちゃん 忘れさせて!」


「杏梨、いい加減にしろ!」


雪哉は杏梨を離し立ち上がった。



杏梨の言うとおり抱くのは簡単だ。

それに好きな子を愛するのであればそれは最高のものとなる。

だが杏梨は衝動的になっている。

お前の気持ちは?

俺がお前の側にいる唯一の男だから言っているのではないのか?


「ゆきちゃん!」

雪哉の手が離れてしまい、杏梨はパニックにおちいる一歩手前だった。


「ゆきちゃん!行かないで!」

嫌われちゃう!

分かっているのに止められない。


「杏梨、今は夢を見て混乱しているんだよく考えるんだ 衝動的に走れば後悔することになる」


杏梨から離れてドアに向かう雪哉は振り返って言った。


「ゆきちゃんが相手してくれないんなら違う人を見つけるっ!」


「杏梨、何を!?」


杏梨は立ち上がって小さなカバンを手にした。


「待てよ!」


自分の脇をすり抜けて行こうとする杏梨の手首を捕まえる。


「離して!忘れさせてくれる人を見つけるんだからっ!」


脅しではなかった。


このトラウマを払拭してくれる人を見つけに行こうとした。


「何をバカな事を言っているんだ!」


「離して!」


「杏梨っ!」


杏梨の両肩に手を置き瞳を見つめる。


杏梨は潤んだ瞳を向けたがすぐに視線をそらした。


「知らない男がお前に触れて我慢できるわけがないだろう?」


「我慢できる そうしたら忘れられるもん!」


俺は他の男に触れさせる気はサラサラない。


「……分かった」


次の瞬間、雪哉は杏梨の唇にキスをした。



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