Love Step
眠ったか……。


そっと杏梨の身体から腕を外すとベッドから降りる。


立ち上がった時、携帯電話の着信メロディーが聞こえてきた。


~~~♪


杏梨の通学カバンの中から聞こえてくる。


一瞬ためらった後、カバンの中から杏梨の鳴り続ける携帯電話を取り出した。


着信は「香澄ちゃん」


「もしもし?」


『も、もしもし……?』


女の子の驚いた声が聞こえてきた。


『あ、あの、この電話、杏梨のじゃ?』


「あぁ 雪哉です 杏梨は眠っているんだ 用件を伝えておくよ?」


雪哉と聞いて香澄は安堵した。


『さっき、電車で発作が起きたんです だから心配になって』


「発作?」


『知らないうちに男の子が後ろに立ってしまって……』


そうか……それで様子が変だったのか。


雪哉は杏梨の取り乱した様子に納得した。



「知らせてくれてありがとう 香澄ちゃん 杏梨の事よろしく頼むね」


学校では杏梨を守ってやれないから。


『はい!任せてくださいっ』


電話を切った雪哉は杏梨の元に戻り頬を撫でる。


辛かったんだな……。

俺が守る。

全力で守るから自分を見失わないで欲しい。


* * * * * *


雪哉は簡単な夕食を用意するとリビングのソファーに座り本を読んでいた。


しかし目は文字を追っていても頭に内容が入ってこない。


何度も同じ箇所を読み返し、そんな自分をフッと笑う。


どれだけ杏梨にのぼせているのか。

10歳も違う年下の杏梨。

我を忘れて抱きそうになった。

本当に杏梨の言うままに抱けばトラウマは克服できるのだろうか?

心理学者でない俺にはまったく分からない。

ただ……それも一つの手かもしれないと思った。

万が一、杏梨がこれで壊れてしまったら……そう考えると怖いが治るかもしれないと思うと試したくなる。

杏梨を他の奴に絶対に触れさせたくない。




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