空白の玉座
プロローグ
ルディア王国の王都から遥か北のベルトワール帝国との国境付近、カシュカ村。
断崖絶壁に囲まれた村は他の地との接触がほとんどなく独自の文化を築いていた。
学校帰りの少女たちは、楽しくおしゃべりしながらいつもの帰り道を歩いていた。
学校といっても読み書きを教えてくれるだけの簡単なものだが、難しい字を覚えてきたルシアは先生から借りた本を読むのが最近の楽しみだった。
「ルシア、今日うちによってかない?」
柔らかな金色の髪をおさげに結った友人をルシアは見上げた。
「…今日はダメ」
「また読書~?わたしたちもう14だよ。本が恋人でどうするのさ。サリが今日は男子も誘うって言ってたよ?」
小柄な自分に比べて隣の友人、ミュリは大人っぽい。
体つきも女の子らしいし、最近オシャレに目覚めて自慢の耳飾りがキラキラ耳朶の下で光っていた。