空白の玉座
それに比べて自分は。
ルシアは自分の体を見下ろす。
背も低くて胸もない。
女の子らしさを出す為に伸ばしてみた金色の髪も、皆と違って癖毛でウェーブしていて纏め難い。
「私恋人なんていらないもん。植物のことに詳しくなればお父さんたちに付いて狩りに行けるし」
うぇ~、とミュリが顔を歪めた。
いつものことだ。
ルシアは村の向こうにそびえる絶壁を眺めた。
狩りに行くにはあの岩場に切り開かれた道を通ってその奥にある森へ行く。
この村じゃない、外の世界をずっと見てみたかった。
「…何だろう、あの煙」
ミュリの言葉に視線を手前の集落にやる。
あちこちから細い黒煙のようなものが上がっていた。
今は野焼きの時期でもないのに。
なぜだか胸騒ぎを覚えた。
無意識に駆けだす足に、後ろから呼ぶミュリの声が遠くに聞こえた。