空白の玉座
狂う歯車
どれも同じように見える庭木をセシは振り返った。
少し高めの三角に刈られた木が見えたら右に曲がれ、そう言われてずっと歩いてきたがどうにもこうにもそんな木は見当たらなかった気がする。
「近道なんて聞くんじゃなかった」
薄暗くなりかけた周囲に気分が焦る。
溜め息をついてふと視線を上げると、建物の端に人影が見えた。
逆光で見えずらい姿にセシは目を細めた。
月のように輝く黄金の髪に思わず目が奪われた。
柔らかい風に揺れる長い髪に、白い肌、表情は少し見えづらいが哀しげに見える。
昼間見たアメリアよりもずっと若い、というよりは幼い少女のようだった。
ルディアの王族に姫君はいない。
不思議に思いながら目を凝らす。
…泣いてる?
よく見えない表情に近付く為足を踏み出した時、小枝でも踏んだのか足元でパキンと軽い音がした。
「!!」
少女がこちらに視線を投げる。
「あ…」
セシが口を開きかけた時には身を翻して少女は部屋へと戻ってしまった。