実話~運命~
高卒のわたしにはきっと正社員は無理だろう。

バイトでもいいやって思った。

ただ、朝くらいから夕方までみんなと同じような生活をしたかった。



わたしが始めたのは雑貨屋さんのバイト。

自給880円で、早番が朝10時から夜7時まで休憩1時間で働く。

中番、遅番もあるけど遅番で早番の2時間違い。

検品したり、包装したり、掃除したり。

暇だったけど色々香水を覚えることができたし、何より人間関係がよくって楽しかった。



毎日一緒に休憩する人とランチを食べて、ゆっくり仕事をする。

その繰り返し。


楽だった。

そんな生活になれて、笑うことも多くなったし、食べることも寝ることも出来るようになった。

オシャレをして好きな服着て普通の20歳になった。

成人式にも行けず苦労した2年を取り戻そうって張り切っとった。


そんなわたしに美容師の仕事を始めた志穂も猛も大学2年になったウィルも、企業に就職した鈴も、トリマーの見習いしてる義孝も、大学3年になった譲二も安心してくれた。


もちろん梢ちゃんと千尋ちゃんも。

2人はキャバ嬢になっとった。

そんな仕事しながらもわたしがしとったことを知って


「風俗、金目当てで行く子って半分くらいやからな。なんらかの事情がある子も半分はおるねん。あんたはもうこれから引っかからんやろ。もう前向いて歩き。」

って言ってた。



ウィルとは別に恋愛感情が復活することもなかった。

ウィルは初めて会ったときは彼女がおったけど今はおらんらしい。


周りから復縁すれば?って言われてたけどそんな気はなかった。

ウィルが嫌いなわけやない。

信じられないわけでもない。

今のウィルは大人やし誠実やってわかっとったし。

ほんとにまだ、恋はこわかっただけ。
< 108 / 236 >

この作品をシェア

pagetop