実話~運命~
「お、誰もおらんな。」


そう言って掴んでいたわたしの腕を離した。


「ここが何かあるの?」


「いや、実はお前と話したかっただけや。お前、好きな奴とかおらんのやろ?」


「好きな人!?いないよいないよ。そんな人。」


顔を真っ赤にして否定した。

恋だなんてまだ一度たりともしたことない。

人に興味がなかったから。


「そんな焦って言うことやないやろ♪どや、俺とか。」


「え??」


「だから俺と付き合ってみないかってことや。里美のこと気に入ってしもた。初めての男にせーへん?」


その言葉に耳を疑った。

わたしが告白されてるの!?

男の人に!?

化粧って偉大なんだな…。

でも、付き合うって何するんだろう?

エッチなことしたり?

ヤダヤダ、コワイ。


「わたしにはまだ早いよ。付き合うとか…。」


「バーカ、俺は小5くらいには彼女おったで。早いじゃなく遅いやろ、普通に。守ったるから。付き合ってみよ。」


小5という言葉にまたもや耳を疑った。

大人の世界だなと思って。


多分あと5秒おくれていたら”じゃあ…付き合ってみる”って言っていたかもしれない。

その瞬間理科室のドアが開いた。


「おい、お前らここに勝手に入るな!!何しとんねん!!」


先生が来てわたしたちはさっさと追い出された。

それと同時に昼休みの終了を告げるチャイムが鳴った。


「帰り、答え聞かせてな。」

そう言って大悟くんは3年の教室へ帰っていった。
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