実話~運命~
家に入る前息をフッと吐いた。

そして大きく吸い込んだ。


これから会うのはあの男や…。

負けへん。

そう意気込むように。


「里美、俺らおるし玄関で待っとってええで?」


弟のくせに年上のような言い方をする裕太。

洋介くんはというとその瞬間家のドアをあけて入っていくところだった。


その後ろをわたしらがついて行く。


裕太が入り、そしてわたし。

そのときだった。


「おぉ洋介くん、久しぶりやな。」

あの男の声が聞こえた。


立ち止まってしまうわたし。

そんなわたしに気付くことなく、裕太はどんどん進んで背中は遠くなっていく。


「おい、オッサン。」


洋介くんのドスの効いた声が聞こえる。

そして


「久しぶりやな、康夫さん。」


裕太の怒りのこもった声も聞こえる。


「裕太くんも帰ってきたんや。久しぶりやな~。飲むか??」


そんなノーテンキな声を出す男。


「オッサン言うとるやろ。聞けや。」


洋介くんがシカトされとったことにまた更にキレ始めた。


「オッサンて…。どうしたん?何かあったん??」


あの男がちょっと焦った感じというかおべっか使うような声を出してる。

それをわたしは立ち止まったまま聞いとった。
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