実話~運命~
ステージ1 幼少時代
わたしが物心ついた頃、すでに母親と弟の3人暮らしやった。


でも別に淋しいと思うことはなかった。

父親がいたことがないからそれが普通と思っていたから。


でも周りの家には父親の姿が。


「なんで里美ちゃんにはお父さんいなんだろうね。あげれないけどたまになら貸してあげてもいいよ。」


小さいながらにわたしを不憫に思ったのか、近所に住む知恵ちゃんが言った言葉をわたしは今でも忘れない。

初めての友達。

その友達というものの優しさに初めて触れたときやったと思う。


「ううん、いいよ。知恵ちゃんにお父さんいなくなったら淋しいでしょ?」


そしてこう返したことも忘れてない。

借りて返したくなくなることをわたしは恐れた…ううんそうじゃない。


欲しくなんてないと小さいながらに自分に言い聞かせていた。


そんな知恵ちゃんとの別れは早かった。


わたしたちが引っ越すことになったから。

母親に男が出来てわたしたちに父親が出来ることになった。


その人の家に引っ越す。


「知恵ちゃん、わたしにもお父さん出来るんだよ。」


「ほんと!?でも里美ちゃんがいなくなるんだったらうちのお父さん貸してたほうがよかったよ。」


泣きながら知恵ちゃんは言った。


初めて出来た友達とわたしは別れた。

このとき知恵ちゃんほど淋しいという想いはなかっただろうと思う。

だってお父さんが出来るってことがあまりにも嬉しかったから。
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