実話~運命~
「いたた…あのクソ女、本気で殴りよった。」


「あっちのほうがもっと重症や。里美、加減せんやったもんな。あんなギャルに元ヤンのあんたをやれるわけないのにバカやな、あいつも。」


帰り、わたしたちはこんな話をしながら歩いていた。

顔は赤く腫れ、口内も唇も切れていた。

夏美のほうは目のあたりというか顔全体が腫れていたらしいけど興味なかった。


ケンカのことは1年で噂になったようでわたしをみんながジロジロ見た。

夏美はわたしに小さく「覚えてろよ。」と言ってあの後帰って行った。



玄関のとこに行くとそこにはウィルと猛がいた。

靴を履いてわたしたちを待ってるかのように。

たぶんさっきの事聞いて話聞こうって思ってるってとこやろ。


「なぁ里美、あんた気付いとらんだけやで?あんだけケンカしたのほんまは自分のことよりウィルのためなんやろ?あんた、ウィルのことほんまは好きなんやって。」


ウィルと猛の姿が見えた瞬間、志穂が言った。


「はぁ!?それはないわ。ただイラつい…」


「猛、わたし猛に話あんねん。ウィル、今日里美ケガしとるから送ってってな。」


志穂はわたしの話も聞かず猛とさっさと行ってしまった。

そんなはずない、志穂は勘違いしとんねん。

そう思ってたけどウィルのそばに行くのを躊躇していた。


「里美すごいことなっとるやん。はよ行くで?注目の的になりたいんか??」


ウィルは笑いながら靴を履いてるくせに土足であがってきてわたしの手を引いた。


「ウィル、わたしなんであんなガキみたいなことやったんやろ??」

わたしは手を引かれた右手じゃなく、左手で靴を履き変え、ウィルに質問した。


「里美がケンカはほんま珍しいもんな。ええんやない?たまには。」


そう言うウィルは手を掴んでいたくせに、いつのまにか恋人つなぎのように指をからませ手を繋いでいた。


わたしは前のように振り払うこともなく


「変やねん。ほんま。志穂の言うとおりかもしれん。」


そうつぶやいた。
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