実話~運命~
それから近くの公園に止めていたウィルの原付に乗って家へ向かった。

家にはちょっと暗くなった夕方に着いた。


「俺、ちょっとこの後用事あるからもう行くな。ちゃんと冷やしたりしとかなあかんで?な?」


ウィルはそう言うとまたエンジンをつけた。

女と遊ぶってのはよくわかっていた。

ウィルは最近、わたしたちとではなく他の女と帰っているところを見たことがあったから。


だめや!!

そう思ったのと同時に声を出した。

わたしが自分の気持ちを素直に伝えたのはきっと産まれて初めてだったと思う。

今までは全部むこうが好きになってくれてたから。


「ウィル…行かんといて…。多分わたし…あんたが好きや。」


この言葉を毎日言ってくれてたのに何で気付かんかったんだろう。

そして何度も断ったのに言ってくれてたウィルはどんだけ強いんだろう。


そして…この一言で涙を流してしまったわたしはどんだけ弱いんだろう。


ウィルに初めて見せた涙、そして弱さだった。

この姿にウィルは戸惑ったと思う。


俯いてしまったわたしの耳にエンジンが止まる音が聞こえた。


涙がポタポタと下に落ちる。

こんなにウィルが好きだったなんて…。



「や~っと叶ったわ、ほんま。里美、こっち向き??」


その言葉でウィルを向くとウィルはバイクから降りていて、ブハッと吹き出した。


「なんやねん、その顔!!お前鼻水まで垂れとるで!?」


その笑いにムカつき、さっきまで泣いてたくせにわたしはウィルを蹴った。


そのときわたしをギュッと抱きしめた。


「ウィル、その鼻水、制服につくで?」


「かまわへん。里美のやったら大歓迎や。」



そう言ってわたしたちは2度目のキスをした。
< 51 / 236 >

この作品をシェア

pagetop