実話~運命~
母親はそこでわたしに初めて謝った。


「今まで辛かったでしょ?ゴメンね、里美。これからは裕太とお母さんとおばちゃんとかとで、ずっと仲良く暮らそうね。」


その言葉に涙が流れた。

今まで何も相手してくれず、目も見てくれなかった母親がわたしと向き合ってくれるようになるんだと。


父親は何度か家に来た。

ドアをドンドン叩いとった。

その度におばさんが警察を呼んで追っ払っとった。

警察は面倒を起こすうちの家に嫌悪感を抱いとったと思う。

洋介くんは間違いなく目つけられとったから。



裕太は暇さえあればわたしの手をずっと握っていた。

裕太も不安だったんだってすごく感じた。

わたしの不幸はついに終わりを迎えた。

そう思ったけど一時の休息に過ぎない。

この人生、何度となく襲ってくる不幸、ただの一休みやった。




初めて学校に行く日、道がわからないわたしは洋介くんと一緒に行くことになった。

洋介くんは徒歩でもなく、自転車でもなく普通に原付に乗り、後ろにわたしが乗るよう言った。

おばちゃんも、お母さんだってこの行動に何も言わなかった。

放任。


「里美、ヒョロってしてるから落ちひんよう捕まっとくんやで!!」


そう言ってビュンビュン飛ばしてくれた。

初めて乗った原付。

初めて掴んだ男の人。


わたしには初めての多い日の幕開けだった。
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