実話~運命~
そんな冬だった。

進路も決めず、わたしはフラフラとバイトをしていた。


周りはというと、猛と志穂は同じ美容専門学校に、鈴は短大に、義孝はペット関係の専門学校に進学が決定して、譲二は四年生大学の受験に一生懸命の時期だった。


そんなときにわたしは出会った。


「子犬がおる思たわ。」


そう話しかけてきたのはヤスさん。


「はぁ?」


「やから~、子犬や思たら人間やった。」


「へぇ。じゃ。」


そう言ってわたしが後ろを向いて手をあげて去ろうとしたときやった。


「犬!!」

また呼ばれた。

嫌顔しながら振り返って


「誰が犬やねん。」


と言った。

もっと言い返すことは出来た。

でもしなかった。


だってヤスさんはみるからに堅気やないってわかったから。

関わったらあかんという警報が出てたけど向こうから興味を持たれ、その警報はしょうがなく止まった。
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