実話~運命~
「里美、わたし梢な。梢って呼んでえーから。」

目を真っ黒にメイクしていた人はわたしに笑って話しかけた。


「わたし千尋。里美は苗字何なん??」


すっごい黒いギャルがわたしに聞いた。


「苗字は・・」

小さな声で言った。

でも


「俺と一緒やで。久保崎。久保崎里美っていうからお前ら女同士やし、仲良くしてやってな。」


わたしの言葉を遮りというか、上から洋介くんが言った。

多分わたしの声は誰にも聞こえてなかったと思う。



そう、実はわたしは小さい頃から苗字が変わっていない。

洋介くんはシングルマザーだから当たり前なんだけどあの暴力をふるっていた父親の姓をわたしたちは取らなかった。

入籍はしてなかったらしい。



「そうなんや。てか里美、なんかその制服にスッピン似合わへんやろ。」

「それわたしも思っとった。千尋、メイクしてやれば??」


梢ちゃんと千尋ちゃんが話を進めていく。

それを聞いていないかのように洋介くんたちは”あいつイラつくよな。やったるか。”など違う話をしてる。


学校行かないのかな??

メイクしてるし行かないんだよね??

わたしどうなるんだろう…。

てかメイクとかわたし似合わないだろうし遠慮しなきゃ。

でも言えるかな??

…言えない、言えるわけがない。


そう思っていたら千尋ちゃんがバッグから大きなポーチを2個取り出し、わたしの手を引き近くにあった階段に座らせられた。



「里美細いし制服似合ってんよ。メイクしてもっと綺麗にしてやるで。」


そう言ってわたしの顔に粉を塗ったり鉛筆のようなもので書いたりと30分程千尋ちゃんが目の前で色々やってくれた。


それを横から梢ちゃんがちょっかいを出す。


困惑してたけど何も言えずただ、マネキンのように座っていた。
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