僕のマーメイド
チャイムが鳴って、
騒がしかった皆が席に着く。
と、ほぼ同時に教室のドアが開く。
先生が入ってくる。
そしてその後ろから、
見たことのある女の子も・・・。
「詩歌?!」
思わず叫んだ俺に
ビクッとしたその表情は詩歌その物だった。
俺が声をかけたせいで、
女子生徒がざわついていた。
ざわつきをよそに先生が黒板に名前を書く。
『宇都城 詩歌(うつぎ しいか)』
詩歌は手話を使って挨拶をした。
[これからよろしくお願いします。]
だが、誰も手話を解している人はいない。
なので俺は皆に通訳した。
「〝これからよろしく〟だってさ。」
そう言うと、
口々に「よろしく」と言って、
拍手をし続けた。