幸せはキミと ~お嬢様と貧乏大学生~
<違い>
*お嬢様と
「お待たせしました」
私が迎えに来た車に近付くと、金平さんの運転手さんは後部座席のドアを開けて私を彼の隣に勧めてくる。
「ありがとうございます」
私が乗り込むと車は静かに走り始めた。
「美由紀さん、お久し振りだね。会いたかったよ」
私の腰に手を回し、ニヤリと笑うこの男を私は苦手で仕方がない。
なるべく距離を取ろうとする私に、金平さんは、グッと腕に力を入れ引き寄せる。まるで"離さないよ"と言われているようで怖い。
彼はそれ以上は何もする事なく、ある1件のレストランに車は着いた。
「ここのお料理はとても美味しいんだ。美由紀さんは来た事ある?」
「いえ。初めてです」
「それは良かった」
と、豪快に笑うこの男に連れられて来たのは、名前は聞いた事のある会員制のフレンチレストランだった。
確か、どなたかの紹介がないと会員になれないらしいレストラン。
「お待ちしておりました。金平様。どうぞこちらへ」
私たちが案内されたのは、夜景のよく見える個室だった。
「料亭の娘の美由紀さんのお口に合うといいんだけど」
赤ワインを一口飲み、きな臭い笑顔で笑うこの男。
「とても美味しいです」
イヤな顔も出来ず、私が粗そうなくお相手をしないといけない相手。
日本でも指折りの影響力を持つ国会議員が目の前の男の父親だ。
そして私の家の料亭のお得意様でもある。