幸せはキミと ~お嬢様と貧乏大学生~
"すっげ~ぇ"
これが熱にうなされながらも、隆の家を見たオレの感想だった。
東京のそれもど真ん中にこの敷地? いったい隆って何者?
海辺の田舎町で育ったオレには衝撃的な光景だった。
「インフルエンザA型ですね。薬をキチンと最後まで飲んで安静にすれば、約1週間で完治するでしょう」
数十分前に医者にインフルエンザだと告げられたオレは、今は客間に用意された布団で寝ていた。
話に聞いていた、お手伝いの春子さんが身の回りの世話をしてくれるらしい。
「すみません。春子さん」
「何言ってるの! 困ってる時はお互い様よ」
太陽のような笑顔の彼女は、どこか母さんに似ていて、病気で弱ってるオレには涙が出そうになるくらいうれしかった。
「隆さんたらね…」
「美由紀さんはね…」
オレが元気になるにつれて、春子さんは隆たち兄妹の話をよく聞かせてくれた。
話を聞いているウチに、オレはすっごく美由紀ちゃんに会ってみたくなったんだ。
これが最初に感じた恋心だったのかもしれない。
そして初対面を果たしたキミは、透き通るような白さに華奢な体、照れてる笑顔、すべてが想像以上に可愛くて…、もっと近付きたいって心から感じたんだ。
恋って簡単に落ちるもんなんだな。