べとべとに溶けるほど
しかし、私の体は後ろには向きませんでした。

体を捻ろうとも、私の体躯は前を向いたままで、地下足袋を背中で感じる以外にはしようがありません。

そうしますと、段々と隠れ沈む太陽の思惑で、夜の帳も段々と降りてきた時分ですから、邸宅を前にした私は、すっかり怖じ気づき、周囲の不気味さに脂汗が沸いてきました。

背中にはもう、地下足袋だけではありません。

間違いなく、何か怪しげな気配が私の後ろにはありました。

それでも、私の体は、後ろを向けず、焦躁ばかりが溜まっていくのでした。
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