べとべとに溶けるほど
雨に濡れ、艶がかった國芸学校は、なんとも言えない風情を出しておりました。

随分と大きな玄関先で、雨合羽を脱ぎ去ると、私の出立ちがあらわになりました。

縦襟の洋シャツに袴ズボン、下駄を履いた、所謂蛮カラ姿を身に纏った私は滑稽ではありましたが、これがなるほど、中々書生に見えなくもありません。

窓硝子に映る自分を見て、神妙な面持ちを作り、思わず一つ吹き出すと、私は下駄を揃えて室内へと入って行ったのでした。
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