べとべとに溶けるほど
「はぁ。」

ここでもか。

そうゆう意味合いで私はため息を吐くと、事務員は一段ずれた意味合いで私に同情しているようでした。

「まあ、そう気を落とさずに。万が一、山口先生が来たら、あんたのこと伝えておくよ。」

出来れば、それは勘弁願いたい。

「恐れ入ります、ご迷惑おかけします。」

しかし、私は気乗りしない本心を殺しながら、その場を取り繕うのでした。

「それでは…」

私が一礼して窓口を後にしようとした時でした。

「ああ、あんた、まあ待ちなよ。」

事務員は何か思い出したようです。

「あの娘なら、もしかしたら、先生の所在を知ってるんじゃないかな。」

「あの、娘…?」

私が新しい情報に目を大きく見開くと、事務員は、今度は二段、三段ずれた意味合いで、

「そうさね。それはそれは期待通りの美人でいらっしゃるよ。」

そう言って、くっくと笑いました。

その時、私は照れと憶測と、様々な思考の交錯により、再三の背中の汗染みが広がって行くのをまた、しかと、感じたのでした。
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