べとべとに溶けるほど
「学を修め、業を習い…」

「以て智能を啓発し、徳器を成就し、進んで公益を廣め、世務を開き…」

上沼巡査部長も、私に調子を合わせてきます。

「常に國憲を重んじ國法に遵い、一旦緩急あれば義勇、公に奉じ以て天壌無窮の皇運を扶翼すべし!」

「天皇陛下万歳。」

「天皇陛下、万歳。」

今にして思えば、私は天皇陛下のこの崇高で徳のある勅語について、胸を打たれたり、深く考えたことなどありませんでした。まして、この詔が悪用され、誤った解釈のもと社会全体が動き始めていることへの疑惑など、持ちようがありませんでした。

上司の顔色を伺っては権力に平伏し、また、その権力に取り入ることで威張りちらし、擦り込まれた鸚鵡のように、感情のない言葉に無関心に口を動かしては、ただ、どことなく満足感を得て、務めを果たした気でいる。

これを公務と言えましょうか。

天壌無窮の皇運を扶翼していたと言えましょうか。
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