サクラ
何だかんだと朝は慌ただしく時間が過ぎて行く。
私の頭の中は、目の前の作り掛けの紙袋よりも、書きかけの手紙でいっぱいだった。
何とか今日中に書き上げて、明日の朝には出したい……
もどかしい程に時間がゆっくりと刻まれて行く。昼の休憩時間など、ぎりぎり迄手紙を書いていた。
いつも通り、決まった動作で夕方を迎える。いつもと少し違うのは、五時の仮就寝になっても布団を敷かない事だ。
何枚も書き損じた便箋が、葛篭の中で山になっていた。
彼女への二度目の手紙を書き終えたのは、就寝迄残り三十分もない八時半頃であった。
ふっと、息を吐き、封筒に彼女の名前を認める。
麻宮千晶
何故か緊張し、三枚も宛名を書き直した。
これで明日の朝発信出来る。
固まってしまった腰を伸ばし、漸く布団を敷く。
五分とせず、消灯を告げる音楽が流れた。
私は、その夜も深く深く眠りの底につけた。