サクラ


 暗闇の中で、私は出来るだけ身体を縮こまらせていた。

 じっとしているうちに幾分落ち着いて来た私の心は、筋違いな怒りを抱き始めていた。

 
 もう少しで上手く行ったのに……

 ちくしょう……

 このままじゃ……

 このままじゃ、俺は……


 ふと見上げた先に窓があった。風呂場のようだ。

 ゆっくりと指を掛け、少しずつ力を入れる。

 窓が錆び付いたレールの上を、ギィという耳障りな音をさせながら開いて行った。


 あ、開いた……


 背を伸ばし、中を覗くと、やはり風呂場だった。

 窓を全開にすると、私の身体でも充分通るだけの空間が広がった。

 躊躇う気持ちなど既に微塵も無かった私は、身体をあちこちにぶつけながら、やっとの思いで侵入した。



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