サクラ
幻聴か?
私の心臓は脈を打ち、速まって行く。
少しずつ大きくなる啜り泣きには、殺した者達の怨念を感じさせるかのようだった。
殆ど恐怖の塊と化した私は、血に足を滑らせながら勝手口から外へと飛び出した。
走った。
足が地に着かず、空回りし、何度も転びそうになった。
耳の奥に啜り泣きがこびり着き、私を追って来る。
暗闇の恐怖から逃れたい一心で、気が付いた時には車の通る大通りに出ていた。
生命の温もりを感じれる光りを求め、常夜灯に群がる蛾のように、私はひたすら大通りを歩いていた。
そして数時間後、私は夢遊病者のように歩いている所を巡回の警察官に呼び止められたのだ。