サクラ

 私は、六年前に死刑が確定した死刑囚である。

 裁判が結審する迄、十年ちょっと掛かった。自分の意思からではないが、最高裁まで上告した。

 そして予想通り却下され、弁護士や死刑制度に反対する支援団体の再審活動を自ら断り、私の死刑は確定した。



 それから六年。



 未だ、私は生かされている。

 昔は、死刑の執行日というものが毎週何曜日と決まっていたらしく、その日の朝を迎えると死刑囚の舎房からは、読経が聞こえて来たという。

 現在は、死刑執行日は定められてはいない。

 ある日、突然にやって来る。

 私の被害者達のように、この私にも、突然、死の宣告は下されるのだ。

 私達死刑囚は、その処遇が他の未決囚や、受刑者達とは少し違っている。扱いは、未決と同じ。

 だから、収容される施設は、刑務所ではなく、拘置所になる。

 生活動作も未決囚と同様だが、大きく違う点は、希望すると房内で簡単な作業をさせて貰えることだ。

 ちゃんと、給料も出る。

 ただ、その安さを知ったら驚く。

 一ヶ月の受給額は、一般受刑者と同様に一定期間で上がって行くが、一般受刑者の場合は様々な手当が加味されるのに対し、私達には基本額でしか算定されない。

 以前は、作業賞与金と言っていたが、今は作業報賞金と名称が変わった。変わったと言っても、内実は昔のままだ。

 時給で換算されるのだが、ランクが見習工から一等工までの十段階で時給が上がって行く。特に問題も起こさず、真面目にやっていれば三年半程から四年で一等工に昇給出来る。







< 3 / 89 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop