サクラ
毎日をどんなお気持ちで過ごされてるか、わたし達世間一般の者は窺い知る事など出来ませんでしょう。
償うという本当の意味すら、わたし達はひょっとしたらちゃんと理解をしていないかも知れません。生意気な言い方で申し訳ありませんが、梶谷様からのお便りを拝見させて頂いた時に、ああ、この方は、ちゃんと償ってらっしゃるんだと感じたんです。ご自分の犯した罪を悔やみ、更には己を責め、残された弟様やそのお子さん達への思い、そして、被害者の方達への深い謝意。
他の方達はどう受け取るかは判りませんが、少なくともわたしには、強く伝わって来ました。
わたしがそう感じたのは、手紙に書かれた文字のせいかも知れません。
学生時代にこんな話を聞いていたのを思い出したんです。
「文字の美しさは、その人の心を表す。
美しい文字というのは、上手で綺麗とは違う。
五歳の子供が書いた拙い文字であっても、美しいと思える心があれば、そう見えて来る。
反対に、どんなに綺麗に書かれた文字であっても、美しいと感じなければ、その文字には嘘があるものだ……」
少し観念的で、ただの理屈のように思えますよね。事実、わたしもずっとそう思っておりました。それが、梶谷様のお手紙を手にした時に、こんなにも美しい文字は初めて見たという思いを抱いたのです。
そして、先の言葉を思い出したんです。ですが、梶谷様が犯した事件の事があり、極刑を受けるような方なのに?
といった、疑問さえ浮かびました。
その答えを三度目の手紙に見つけたのでした。
何だかまとまりの無い手紙になってしまいました。
あれも書きたい、これも書きたいと思うばかりで、結局は肝心な事をお伝え出来てないかも知れませんが、どうかお許し下さい。
最後になりますが、弟様への贈り物、喜んでお手伝いさせて頂きます。
ピアフの特集を企画しておりますので、どうかもうしばらくお待ち下さいませ。
長々と大変失礼致しました。
少しずつ寒くなって来ます。お体に気を付けてお過ごし下さい。
では水曜の6時まで
かしこ
千晶より
梶谷様へ 』