サクラ

 長い長い手紙だった。


 身体の中の血が、じんわりと温もりを帯びていた。

 四角い窓の向こうに広がる灰色の塀が、淡いオレンジ色に染まっていた。

 何だか幼い頃に潜った電気炬燵の中ような色に思えて、私は知らず知らずのうちに独り微笑んでいた。

 そんなふうに此処からの景色を眺めたのは、初めてのことかも知れない。

 今日一日だけで何度涙を流したろう。

 それも嬉し涙を……





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