サクラ
冬
姪の多恵子から、手紙と差し入れが届いた。
差出人の苗字を見ると、山本という新しい苗字が書かれてあり、横に少し小さく高梨と括弧されていた。
新婚旅行から戻って来てたのを思い出した。
自分がこんな身では、祝いの電報も送れず、僅かばかりの作業報賞金を弟宛てに送っていたが、手紙にはその事の礼が書かれてあった。
差し入れは、冬物の防寒ジャンパーとセーター、それに新しい下着を送りましたとあり、手紙の最後に父が入院したと短く書かれていた。
そろそろ面会に来てもいい頃なのにと思っていたから、姪の手紙を読んで納得した。
私は直ぐさま弟の病状を詳しく教えてくれという手紙を書いたが、姪からも弟からもその後、便りは来なかった。
水曜日の放送では、彼女がピアフの特集が、若い女性歌手の特番に変更になったと告げ、何度も番組の中で謝っていた。
そんな事はないだろうと思うのだが、まるで私に謝り続けているようで、聴いていた私の方が何だか申し訳ない気持ちで胸が痛くなった。
年の瀬が近付くに従い、私はいつも憂鬱になる。
ラジオから流れるクリスマスのジングルベルを聴く度に、私の記憶はあの時の事を鮮明に思い出すのだ。
睡眠薬の世話になる季節が、今年もやって来た……。