サクラ

 家に戻ると、小さなサクラの刻印が押された手紙が届いていた。

 いつ見てもきれいな文字。

 何となく今週も届いたかと、妙にホッとする。

 死刑執行のニュースは、去年の秋以来聞かないから、暫くは無いとは思っているが、こうして毎週、手紙のやり取りをしていると、届く曜日が一日か二日ずれただけで新聞記事を確認してしまう。

 今日の手紙には、暮れに結婚した弟の娘が面会に来た事を事細かに書いてあった。

 読みながら、人と話す事がこんなにも嬉しいものなんだなと、他人の事ながら実感させられた。

 返信用の便箋を取り出し、最初の一行を書いて、暫く考えた。

 それを破くと、千晶は机の引き出しから別な便箋を取り出した。

 花の押し絵のある便箋で、季節柄この方がいいかも知れないと思い直したのだ。

 手紙には、三月末には今の放送が終わる事を書き、残念だという旨を伝えた。


『これからは、文字からわたしの言葉を感じ取って下さい……』


 少し気恥ずかしいな、と感じたが、最後にそう書いて封筒に入れた。



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