サクラ


「それ位は判るわよ。これでも報道目指してたんだから」

 手紙の内容はごく在り来りのもので、部分的に拘置所というものを窺わせるが、そのサクラのスタンプの意味さえ知らなければ、普通の手紙と同じだった。

 差出人の名前と、デスクの隅にあったプリントを見比べた。

 梶谷耕三。

 200X年死刑確定。

「死刑囚かぁ……。やっぱりヘビィだよねぇ……」

 独り言を呟き、プリントに書かれてある梶谷耕三が犯した事件の概要を改めて読んで行った。


 199X年の12月、クリスマスイブの深夜にその事件は起きた。


 盗みを働こうとして民家に侵入した梶谷は、その家の家人である夫婦と、その両親の一家四人を殺害し、現金五十万円余りを奪って逃げた。


 達筆な文字で書かれた事件の当事者の名前を改めて見返した千晶は、大きくふうと息を吐いた。

 傍らでその様子を眺めていた大越は、やれやれといった表情で千晶のデスクから離れた。





 
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