来栖恭太郎は満月に嗤う
手綱を操りながら、知らず舌なめずりをする。

ハルパスが俺の手で屠られた事で、他の使用人達も色めき立つに違いない。

普通ならば、ハルパスは見せしめだ。

俺に逆らう者の末路を暗示させる為の生贄。

しかし、我が屋敷の使用人達もまた、筋金入りの曲者揃い。

この程度の事を見せ付けられたくらいで怖気づき、俺に一生媚びへつらい続けるような軟弱者ではあるまい。

むしろ憎悪の炎を燃やし、復讐に拍車がかかるくらいのものだ。

…今宵は愉しい夜になりそうだ。

何せ我が屋敷には、俺に恨みを持つ者ばかりだからな。

偶然とはいえ、よくぞここまで復讐者ばかりが揃ったものだ。

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