来栖恭太郎は満月に嗤う
やがて愛馬は屋敷の敷地内に辿り着き。

「今帰ったぞ」

俺は屋敷の玄関まで出迎えに出てきたクレオとリルチェッタの前に馬を止める。

そして愛馬の背に載せた亡骸を、彼らの目の前に投げ落とした。

「ひっ…!」

リルチェッタが鋭く息を飲む。

「く、来栖様…これは…!」

普段冷静沈着なクレオでさえ、その声には動揺が窺えた。

「見れば分かろう。猟場番のハルパスだ」

腕組みし、口端をつり上がらせ、俺は亡骸を足蹴にした。

「使用人の分際で俺に盾突き、あまつさえ命まで狙おうとした為にボロクズと化した愚か者の成れの果てだ」

クレオ、リルチェッタの順に顔を見た後、俺はこれ見よがしに告げる。

「明日は我が身という奴だな」

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