来栖恭太郎は満月に嗤う
ゾワリと。

俺の言葉にクレオとリルチェッタが殺気立つ。

これ程までのあからさまな殺意を俺の前に出すのは、彼らが使用人になって初めての事ではないだろうか。

無理もない。

『復讐を挑んだ所で貴様らなど返り討ちだ』

俺の言葉にはそういう意味が込められていたのだから。

二人の殺意を真っ向から受け止めるように、俺は薄笑みを浮かべる。

最早抑え切れまい。

この場で復讐劇の幕を開けるか?

挑発的に、一歩踏み出す。

しかし、この挑発に食いついてきたのは意外にもリルチェッタでもクレオでもなく。

「来栖うぅうぅうぅぅっ!!」

人語を叫びながら飛びかかってきた番犬のライガンだった。

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