来栖恭太郎は満月に嗤う
鋭い牙を剥き、躍動する全身の筋肉を弾ませ、俺に向かって食らいかかってくるライガン。

「フン」

俺は慌てる事なく、その顎を片手で掴んで咬合を阻止した。

「来栖ぅぅっ!」

それでも俺を食い千切り、引き裂こうと、ライガンは唸り声を上げながら暴れる。

「只の畜生ではないと思っていたが、人語まで解するとなると、いよいよもって化け物狼だな、ええ?ライガン」

手の中で抵抗するライガンに言ってやる。

「あれから少し、俺も勉強させてもらったよ…『lycos』…確かギリシャの言葉だったよなぁ、リルチェッタ?」

「!」

リルチェッタがハッとする。

『lycos』

どうやらギリシャでは専門用語として使われているらしい。

英語では『lycanthropy』。

その意味する所は。

「人狼…そうだろう?ライガン」

< 107 / 162 >

この作品をシェア

pagetop