来栖恭太郎は満月に嗤う
顎を掴まれたままのライガンの体が、ゾワゾワと総毛立つ。

その肉体が奇怪に蠢動し、骨格そのものから変貌していく。

やがて彼は、月に向かって咆哮すると同時に、人間と獣の中間態…いわゆる獣人の姿へと変身を完了した。

「半魚人の次は狼男か…いよいよ化け物屋敷だな、我が屋敷は」

「てめぇが人の事言えた義理かよっ!」

ライガンの鋭い爪が、俺目掛けて繰り出される!

俺は軽く後方へと跳躍し、その爪を回避した。

「…やれやれ」

乱れたスーツを直し、改めて目前を見やる。

執事、メイド、人狼と化した番犬。

どいつもこいつも、主人たるこの俺に並々ならぬ憎悪を抱く、忠誠心なき使用人どもだ。

「この場で仕置きが必要か…」

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