来栖恭太郎は満月に嗤う
「両親を貴方に殺され、私の頭の中にあるのは、どうやったら貴方に復讐を遂げられるか…その一点だけだったわ」

リルチェッタは静かに一歩歩み出る。

「でも私はモンスターハンターの娘とはいえ、只の人間。真祖たる貴方に対抗するには非力すぎる…だから私は…悪魔に魂を売ったの」

その巨大な拳が握り締められる。

「毒をもって毒を制す…人外を駆逐するには、人外の力を得るしかない…しかも人間の手で生み出された、人外を遥かに超える力をね」

人間の手で生み出された、人外を超える力?

彼女のその言葉に、俺はピンと来た。

そうか…リルチェッタめ、『禁書』を手に入れたな。

1800年代、科学者を志したスイスの名家出身の青年が、故郷を離れてドイツで自然科学を学び、狂気すら孕んだ研究の末、完成させた『理想の人間』の設計図。

人体を改造し、怪物じみた容姿と力を身につけさせる為の設計図。

それを裏の世界では『禁書』と呼ぶ。

そしてその『禁書』を作り上げた人物の名は、ヴィクター・フランケンシュタイン。

「リルチェッタ、お前の正体は…人間である事を捨て、復讐の為だけにその身を改造されたフランケンシュタインの怪物という訳か」

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