来栖恭太郎は満月に嗤う
さて、こいつらをどうしてくれようか。

血に塗れ、息も絶え絶えになり始めた使用人達を嬲っていたその時だった。

「あらあら…無様にやられたものね」

凄惨な修羅場に似つかわしくない、鈴の音の如き声が庭園に響いた。

俺は思わず蝙蝠の群れから元の姿に戻り、声の方に視線を送る。

…屋敷の門の入り口。

そこに一人の少女が立っていた。

髪は銀髪、左右におさげにした髪を縦巻きにカールした、いわゆる縦ロール。

フリルやレースをふんだんにあしらった黒を基調としたドレスを身に纏い、所々にラバーの小物を身につけている。

ゴスロリという奴だろうか。

その出で立ちは可憐さや可愛らしさを強調してはいるものの、どこか死の匂いを感じさせる。

そしてその匂いは、決して服装や出で立ちだけによるものではなかった。

…薄笑みを浮かべ、俺はその少女に言う。

「お前がこの連中を俺にけしかけた黒幕か、娘」

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