来栖恭太郎は満月に嗤う
ギロリと。

愛らしい表情とは裏腹の冷徹な瞳で、娘は俺を見やる。

「吸血鬼風情が私を『お前』呼ばわりするな。私は名門貴族ローゼンハイム家の女で唯一、爵位級と同等の力を認められた娘よ」

そう言って。

彼女は粘着質を帯びたうっとりとした表情を浮かべた。

「アリカ姉様、または女王様と御呼びなさい」

成程、随分傲慢にして変質的、爛れた趣味のようだ。

しかし、興味深いのはこのアリカ・ローゼンハイムという娘の変態趣味ではなく、その家柄の方だった。

ローゼンハイム家か。

それならばこの使用人達の黒幕と名乗るに相応しい。

「そうか…お前は悪魔か」

< 126 / 162 >

この作品をシェア

pagetop