来栖恭太郎は満月に嗤う

そんな次元の悪魔様が、この世界では何の用だというのか。

「お前よ、来栖恭太郎…だったかしら？」

アリカは俺を指差す。

他人を指差すのは、欧米では非常に無礼な行為だというのを知らないのだろうか。

生まれはよくても育ちは悪いらしい。

「血を吸うしか能のない蝙蝠どもの親玉程度の吸血鬼の分際で、貴族気取りでこの世界で幅を利かせているそうじゃないの、お前。何様のつもり？高貴で気品があって、真に気高いのはこのアリカ様だけよ？それ以外の下賎な連中が貴族気取りで振る舞うのは、たとえごっこ遊びでも許せないわ｣

たかがそれだけの理由で、この俺にリルチェッタやクレオ、ライガン、ハルパスといった連中をけしかけたのか。

リルチェッタ達が少々気の毒にさえ思えてくる。

「我儘お嬢様の気まぐれに付き合わされて、この俺の相手をさせられたとはな…つくづく薄幸の少女だな、リルチェッタよ｣

俺はそう言って、血塗れのまま庭園に転がる息絶え絶えの少女を一瞥した。